夫の診断を受けて、何をどうしたらいいのか困っているとき、エピを食べたら涙が止まらなくなったことがあった。大学生時代から通っている小さなパン屋さんの、ごくごく普通のエピなんだけど、焼きたてを食べたら存外においしくて一気に丸ごと食べてしまった。おいしい!と思った瞬間から涙がぼとぼと落ちてきて、号泣しながら食べた。家でひとりだったからよかったものの、公園なんかで食べていたら気味悪がられたと思う。
夫は顎の手術をしているし、最近はアスリートのような糖質制限生活なのでエピは食べられない。こんなにおいしいのに一緒に食べられないのか、という悲しみ。
20年通っているパン屋さんのいつものパンなのにこんなにおいしく感じるんだ、という感動。作った人の顔がわかるだけに「ありがたや」と思ったりもして…。
いろんな気持ちが混ざっての号泣。
それから何回かエピを買って、そのたびに泣きそうになる。ちょっと困ってしまった。
用事のついでにパンを買って食べる、というごくごく普通の日常に毎回「号泣」が接続してしまったら困る。泣きたいときに泣けることは大事だけど、パンを食べたいときに必ず泣いてしまうのは不便でしかない。
昨日も森の仕事前にパン屋さんの前を通る。時間もちょうどお昼どき。買うしかない!と内心恐る恐るお店へ。エピしかなかったら泣いちゃうから今日森ではお昼抜きかなと思ったほど。
でも運よくサンドイッチセットがあった。小さな箱に二口サイズのサンドイッチがキュッとお行儀よく並んでいて可愛らしい。ミニミニコッペパンの焼きそばパンまで入っている!長年通っているけど、このセットには初めて出会ったので思わず買ってしまった。
すぐ近くの幼稚園の子が「水曜日はサンドイッチランチなんだよ。おいしいよ」と自慢していたのを思い出した。あの子の園のお裾分けかな。確かに幼稚園児サイズ。味も練乳かミルクジャムみたいな甘いもの・ハムチーズ・優しい味の卵サラダ・お野菜ゴロゴロのポテサラと栄養に配慮した感じ。味も見た目も優しくて完璧なランチボックス。パン屋さんの愛情に感服した。今回はへえ…と感心しすぎて涙は引っ込み無事食べられた。あのお店のパン→号泣チェーンは断ち切れたかな。